ことばにまつわるエトセトラ(コラム集)


このコラム集は、日常生活で話したり聞いたりしてふと疑問に思うこと、また、ことばに関する、気付かないでとおり過ごしてしまうような些細な(ときにどうでもいいような)ことを、様々な視点から考え、私論を展開させたものです。話題は、社会現象、ジャーナリズム、テレビを中心としたメディアなど、日常生活に密接な事柄を中心にしていこうと思っています。皆様に納得して、あるいは喜んでいただければ幸いです。このコラムに関するご意見は、こちらまで。なお、本コーナーの開設にあたっては、飯田朝子さん(中央大学教授)のホームページ「ことばの素朴な疑問を素朴に考えるページ」(現在停止中)に依拠する部分が多く、色々ご協力いただいております。

第20回 日本語のリズムをこわす!?「スマホ」

 「スマホ」ということばを初めて聞いたとき、SMAP の出演する新しいテレビ番組か何かの略したものかと思ってしまった。
 「スマホ」は、当然ながらと言うか、「スマートフォン」の略語である。スマートフォンは、いわゆる普通の携帯電話に加えて様々な情報携帯端末機能を備えた携帯端末と定義される。携帯電話の普及が徐々にスマートフォンに移行しつつある昨今である。
 ところで、「スマホ」が「スマートフォン」からの略語であるなら、「スマートフォン」で「スマフォ」になるはずであるのになぜか「フォ」が「ホ」になっていて「スマホ」である。この理由の一つとして、「フォ」という音(文字)が本来の日本語にないものだったため、「スマフォ」では言いにくいという感覚があるということがある。英語の “phone”は「テレフォン」のように「フォン」という言い方が普通である一方で「メガホン」のような言い方もあって、幾分「言いづらい」音なのかもしれない。
 「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」などは本来の日本語には文字の表記も音も存在しなかった。やがて外来語の表記法として、また、音声の模擬としてこのような表記と(だいたいの)発音の工夫がなされた。そして、だいたい現在のこれらの文字表記に合った発音がなされるようになってきたようだが、少し年齢の上の世代では、「巨人ファン」を「巨人フアン」、「フィルム」を「フイルム」と言ってしまっている。若い世代でもこのような言い方を時々やらかす。要するに、「言いにくい」音なのである。
 「フォ」はどうだろうか? 「フォークダンス」「フォロー」などが言いにくくて「ホークダンス」「フオクダンス」、「ホロー」「フオロー」などと言うことはまずない。ということは、「ファ」や「フィ」に比べると「フォ」はずっと「言いやすい」音である。そのせいで、「スマートホン」や、おそらくその形からの略語「スマホ」はどこか耳障りである。
 もう一つの違和感は、略語の形である。複合語からの略語は、「ファミレス」←「ファミリー」+「レストラン」のように、2拍+2拍(拍はモーラというが、日本語の場合、小さく書くものは除いてほぼ仮名1文字分に相当)で成り立つのが普通で、これは日本語の、心地よいと感じられるリズムと関係がある。これに従えば、「スマートフォ(ホ)ン」からの略語は「スマホン」「スマフォン」などの方がリズムに従っていることになる。それなのに、現実は「スマホ」である。これは、本来の日本語のリズムにしたがっていない。こういう全体で3拍の略語は、最近(ここ15年くらいか)の間にどんどん増えて来ている。「ラブホ」←「ラブホテル」、「ノミホ」←「飲みほうだい」などである「スマホ」もその流れの一部で、日本語の古式ゆかしいリズムを破壊しているように感じられる。(2011/7/6)

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